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成人てんかんの初期診療 NEJM review

CATEGORY:medical
↻ 2021.11.20/2021.11.20

サイト名の通り,Non-Medは医学以外の内容を書くブログとしてスタートしました.

でもこれからは,勉強のアウトプットの場として医学のこともちょこちょこ書いていこうと思います.

 

今回は成人てんかんの初期診療についてのNEJM review(N Engl J Med 2021;385:251-63.)についてまとめました.

 

ーKey Clinical Points ー

●てんかん発作の臨床診断には,詳細な病歴(理想は目撃者の説明)が重要.
●心電図評価は,初発発作/原因不明の失神患者にとって不可欠.
●若年では発作後24時間以内の脳波検査が特に重要.
●焦点性発作が疑われる場合は頭部MRI.
●てんかん発作を起こした患者には,
「リスク因子(睡眠不足やアルコール)」「運転/単独活動中の発作リスク」「発作により危害を加えるリスク」について説明する.
●長期の実用的試験のデータは
 焦点性発作に対するfirst-lineはLTG/LEV(個々に応じたoptionあり).
 全般性発作に対するfirst-lineはVPA.  ※ただし出産の可能性がある女性ではLEV

The Clinical Problem

・成人におけるてんかん発症率は23-61人/10万人.

・初発発作に続いて再発するリスクは60%(最初の≦2年が一番高い).

引用:N Engl J Med 2021;385:251-63.

 

・世界の0.65%の成人がてんかんに罹患しており,発展途上国で最も発症率が高い.

・てんかんが診断されるのは

  ①初発発作から24時間以上経過した時点で,2回目の発作が起きたとき

  ②初発発作だが,再発リスクが高い(10年間で>60%のリスク)と考えられるとき

・「脳波異常(Abnormal EEG)」「神経学的異常(Neurologic Disorder)」「2回目の発作(≧2 Seizures)」は再発リスクを高める.これらの因子をもとにリスク分類し,抗てんかん薬開始の参考にする.

引用:N Engl J Med 2021;385:251-63.

Strategies and Evidence

病歴聴取

・一番重要なのは病歴聴取.目撃者に電話したり,ビデオ録画で診断に至ることも.

・病歴聴取から,LOCの原因を鑑別する

 (誘発性/非誘発性てんかん,失神(VVR,起立性,心原性),心因性)

unprovoked seizureとprovoked seizure
unprovoked seizure;てんかん
provoked seizure;アルコール離脱,薬物,代謝異常(低血糖,低Na),器質的異常(脳出血,脳炎、静脈洞血栓症、腫瘍)に続発

身体診察 ーてんかん以外の原因を検索ー

皮膚:顔面血管線維腫,低メラニン斑(結節性紅斑),自傷痕(心因性発作)

心臓:心雑音(心原性失神),姿勢による血圧変動(起立性低血圧)

眼底検査:頭蓋内圧上昇

 

表:全般性強直間代発作の鑑別疾患
引用:N Engl J Med 2021;385:251-63.

 

検査

血液検査:電解質(Na,Ca,Mg),糖

心電図 :VT,HCM,long QT

頭部画像:初回の発作時に必要.CTが撮影しやすいが,MRIの方が有用(海馬硬化症,限局性皮質異形成,腫瘍)

脳 波 :初発発作後の発作間脳波で異常が捉えられる可能性は低い.

     ≦25歳以下には有益で(全般性活動がある可能性が高い),早期の方が良い.

     また,歩行中・睡眠不足状態で実施すると診断率を高められる.

     脳波検査でてんかん性放電が認められると,年間再発リスクは1.5倍

分類

・発作の表現型は,発症部位(全般/焦点)と伸展様式によって異なり,どの年齢,どんな状況でも起こりうる.

・発作によっては前兆(未視感・既視感,上腹部違和感,味覚・嗅覚など)認めることがある.

・前兆なし=全般性発作を示唆することもあるが,前頭葉てんかんでもありうる.

典型的な痙攣発作
強直期/間代期がそれぞれ1-3分持続し,開眼・無呼吸・チアノーゼを呈する.
しばらくすると覚醒し,痛みと疲労感を認め,ときには舌の側方を噛んでいることもある.

 

表:発作型
引用:N Engl J Med 2021;385:251-63.

 

Management

抗てんかん薬

適応:10年以内の再発リスクが>60%と判断された時
目標:発作なし+副作用を最小限に.発作消失が不可能と思われる場合の優先事項は,大発作の完全なコントロール(大発作はSUDEPのリスク)

・AEDの開始は医師患者双方にとって重要な決定.診断が曖昧な状態での投薬開始は避けるべき.

・初発発作後すみやかに投薬開始された群では,pending群に比べて発作後2年間の再発率が低かった(32% vs 39%).

 ※副作用は早期開始群で多く,最終的な発作寛解・QOLには影響しなかった.

 

➜再発リスクが高くない限りは投薬を控える

 

薬の選択

①てんかん/発作の型 ②有効性 ③副作用 ④薬物動態/力学的特性 +α 個々の特性 をもとに選ぶ.

 ex)不安症(LTG>LEV),肥満や片頭痛(TPM),妊娠の可能性などを考慮

*妊娠と抗てんかん薬*

・VPAは妊娠に高いリスクを伴う(曝露された胎児の約10%が先天的異常,max40%に精神発達遅滞)

・子宮内曝露後の10.3%に先天的奇形(CBM5.5%,TPM3.9%,OXZ3.0%,LTG2.9%,LEV2.8%,曝露なし2.6%)

・母体の発作が,先天的異常/精神発達遅滞にどう寄与するのかは不明

・EURAPの研究によると,

 ①催奇形性は用量依存性(心欠陥2%,尿道下裂2%,口蓋裂,胃腸奇形,腎奇形,神経管欠損,多指症) 
 ②6歳時における認知機能評価でも,用量依存性にIQ・言語能力・非言語能力が低下
 ※他の抗てんかん薬では認められなかった

 

➜妊娠の可能性がある女性では,VPAの使用を避けるべき

 もし使用する場合は,妊娠を防ぐための対策が必要(避妊薬を内服,定期的な妊娠検査など)

 

・LTG,LEVは妊娠における安全性の警告はなく,神経発達遅延も報告されていない.
・葉酸サプリは胎児の神経学的異常リスクの低下と関連,AEDを内服する女性は,葉酸サプリを定期服用する.

 

薬の有効性

・薬半数の患者が,単剤で1年以内に発作が消失(525人を観察した単一施設研究)

 

*SANAD trial*

全般性/未分類てんかんを対象として,VPA⇔LTG/TPMを比較 ➜ 治療失敗/12ヶ月寛解において,VPAの方が優れていた.

焦点性てんかんを対象として,CBM⇔LTG/GBP/TPMを比較 ➜ 治療失敗においてLTGが優れ,12ヶ月寛解でもCBMに非劣性

 

*SANAD-Ⅱ trial*

全般性/未分類てんかん ➜ LEVの非劣性は示されず

 12ヶ月寛解VPA>LEV(36% vs 26%),有害事象VPA≒LEV,費用対効果VPA>LEV

焦点性てんかん ➜ ZNSは12ヶ月寛解に関してLTGに非劣性

 治療失敗/有害事象/費用対効果の面で,LTG>LEV/ZNS

 

以上より,

全般性:VPA ※妊娠の可能性がある場合はLEV
焦点性:LTG ※個々の症例に応じてLEVや他のAEDをchoice

 

表:抗てんかん薬の第一選択薬
引用:N Engl J Med 2021;385:251-63.

 

図:成人発作の初期診療概要
引用:N Engl J Med 2021;385:251-63.

 

生活習慣

運転制限

英国,EU:初発発作・再発リスク低い➜6ヶ月

     2回の発作/初発だが再発リスク高い➜12ヶ月

アメリカ:州によって異なる(イギリスよりは緩い)

日本:運転に支障をきたすおそれがある発作が,2年間ないこと

   ※運転に支障をきたすおそれのない発作は1年間

   ※睡眠中に限定された発作は2年間

溺死,SUDEP

・てんかんに関連するリスクに関して,十分に説明する必要がある

・Lifstyleの見直しを(子供の世話/入浴時などの際,1人でいることを避ける)

 

内服アドヒアランス/睡眠/アルコール

・内服アドヒアランス,睡眠,アルコール制限を遵守するべき

 睡眠:睡眠不足と発作リスク/異常脳波と関連 

 飲酒:①離脱中の発作リスク ②睡眠を妨げる ③抗てんかん薬の遵守を妨げる

    てんかん発症率との間には量的相関がある(相対リスク4-6杯/日;2.44⇔8杯/日;3.27)

    禁酒は不要だが,適切な量を

 

Areas of Uncertainty

診断の確からしさ

・てんかんの診断は,video・EEGでの捕捉なしではmax20%で間違い

・てんかんと診断された患者の多くが,後に心因性発作が発覚,

 てんかんが確定した患者でも,後に心因性発作を発症する場合がある.

・薬剤抵抗性のてんかん患者の診断には,疑問を持ち続けないといけない

 

長期的な影響

・新規AEDの長期的な影響はさらなる研究が必要

 例)ビガバトリン 長期投与患者の半数に視野障害をきたすと発覚するまでの8年間,世界中で使用されていた.

・妊婦・胎児への影響についてもデータが不足している.

 

Conclusions and Recommendations

記事冒頭の症例

●症例●
18歳女性,発作を起こして救急外来に運ばれた.患者は前夜に夜更かしをして飲酒していた.起床後すぐに前兆なく倒れ,顔面を負傷した.目撃情報によると,チアノーゼを伴う全般性強直間代性発作で,舌の側面を噛んでいた.発作時に意識はなかった.これまでに発作歴はなく,「痙攣」「欠神」「光過敏性」などのエピソードもなかった.

症例に対する評価と治療方針

●評価・治療方針●
初発の全般性強直間代発作で,睡眠不足とアルコール摂取歴あり.詳細な病歴聴取により,発作は孤立イベントで,先行するミオクロニーや欠伸はないと分かった.頭部MRI,脳波,心電図などの評価が必要.患者と「睡眠・飲酒などの生活習慣」「発作に伴うリスク(溺死やSUDEP)」「運転制限」について話し合う.脳波でspike and waveを認め再発リスクが高いと判断した場合は,抗けいれん薬を開始する.患者にうつ病や不安症がない場合,LEV+葉酸が推奨される(妊娠の可能性があるため).2ヵ月後にフォローし,反応性や服薬状況,副作用を確認する.